かみなぎ37

 高天原から武佐師まで、季節をひとつまたぐほどの距離をはなれてしまうと、高天原が何をしようと、高天原でなにがおころうと、ひとびとは関心を持ちようもなかった。

 高天原びとが国といえば高天原だけをさし、武佐師びとが国と言えば武佐師のことをさす、そういうことである。

 けれどここ何年かは、そんなのんきなことも言ってはいられなくなった。高天原の天照は王坐をかため、須佐ノ男は国つ者、すなわち高天原びとにとっての土蜘蛛たちを、軍をひきいて鎮めてまわった。土地の神を巫に殺されることは、何よりも恐ろしいことであった。地主神たる土地神が死ねば、土地も死ぬ。実りをなさない土地に、人は住めない。

 数年前に大きな抗いをした常陸の首長が、土地神のみならず一族すべてを皆殺しにされたこともあり、武佐師ものんきにかまえてはいられなかった。八千穂から因幡の呼月の滅びを知らされたからには、秋の祭りはとりやめになった。ひとびとは武器をみがき、いちはやく高天原の軍にそなえなければならなかった。

 因幡が高天原に蹂躙されたということは、国つ者たちに対しての容赦を、まったく否定したということ。遠く離れているとは言え、いつ武佐師にまで高天原の軍がおよぶかわからない。

 とはいえ武佐師のひとびとの明るさは消えず、なにかと気苦労の多いのは、じっさい首長ぐらいかもしれなかった。武佐師の首長互大は、高天原に一人娘を采女にだし、二年に一度の朝貢もかかしてはいなかった。それもひとえに、常陸の二の舞いを恐れるがためである。

 心は国つ者であろうと、高天原にへつらわねば生き残れないのも、また事実だったのである。

 そもそも武佐師は小鹿野でひらかれる秋の祭りは、高天原を監視する役目もになう凪の一族の、腕試しの意味合いがつよい。軍を鍛えることができないかわりに、乗馬や弓を少年のころからの手習いとし、もしものときに高天原の軍にあらがい得るつわものたちを育てていたのである。 相撲の発祥の地とまで言われるだけに、相撲人の中には男よか雄々しい女の相撲人もみえる。そうした女たちは男に引けを取らず戦場に出て、同等の立場でしっかりとした働きを期待されているのだ。

 本来ならば十日も続けて催される小鹿野の祭りだったが、今年は一日きりとなった。武佐師は高天原からも遠く離れていたが、市庭総監督を担っていた阿多流が殺されたことはつまり、高天原が国つ者の懐柔に益がないと見たせいにちがいあるまい。ふたりの巫が高天原を離れてしまったことも、高天原の焦りをより強いものにしている。軍をあげるのに、これほどの好機は今をおいて、他にはない。

「とはいうものの、高天原に抗うなんて、はんぱな覚悟じゃ無理だ」

 八千穂が武佐師にやってきてからちょうど十日後、伊住と卯月が小鹿野に着いた。ふたりは海路をもちいて、まずは荒潟へ行き、そこから陸路で武佐師にたどりついたのだという。外からでは立ち聞きもできないような、御館の中の窓もない籠め室で、明日香や互大らが顔を突き合わせるなか、伊住は苦り切ってそう言った。

「高天原の軍をなめてかかると、痛い目にあう。それに、高天原には現神というやつもいるからね。あの、鳥船だとかいう」

「わかっておるよ。こちらも軍を早急に起こさねばならぬだろう」

「しかし、おんきみよ。武佐師ばかりが軍をあげても、高天原との数のちがいはあまりに大きい。各地の国つ者たちと合流するまで、しっかりしのげるのだろうか」

 卯月はもっともなことを言った。すると、明日香はむじゃきにほほ笑むのである。

「しのげまい。無理であろう」

 伊住は肩を落とした。

「無理であろ、ですむのかい。まったく、姫さま、あんたは何を考えているんだよ。神代から生きていると聞かされたときも、途方もないとは思ったが、今のあんたの物言いも、ずいぶん途方もないぜ」

 あきれた伊住をながめながらも、明日香はほほ笑みを崩さなかった。「途方もない、たしかにそう。しかし、こちらには巫の霊力があるではないか。千里を一息のうちに行き来する、巫の霊力がね。・・・八千穂の霊力をもちいて、わたしは数日前に筑紫へ飛んだ。筑紫にて葦生にまみえ、こちらと同じときに軍を起こすようつたえた。高天原のそれに比べれば、数のうえでは劣っていようと、二つの軍が同時に立ち上がったなら、高天原の軍の撹乱にもなろう。われらが軍を起こすのは、ちょうど一月のちだ」

 明日香はいちど、息をついた。

「それから出手母に飛び、白野のひとびとと武器の配送のための海路の確保を相談してきた。あそこは、若者たちのほうが威勢がいい。与えられたものにしがみつくだけでなく、新しいものを自ら求めることを知っている。よいことだ」

 伊住や卯月は黙って明日香の話を聞いていたが、話終えた後もすこしの沈黙があった。

「筑紫だと」伊住はうなった。「筑紫と言えば、西のはずれだぜ」

 ややしてから、伊住は深く吐息をもらした。

「あんたらは、ちっぽけな水たまりを踏み越えるような言い方をするが、これはすごいことだぜ。・・・巫というのは、どんなことでもできちまうんだなあ」

 芦原中津国じゅうを、じぶんの庭のように行ったり来たりできる霊力への、憧憬めいたものが伊住の言葉にはふくまれていた。それからしみじみと八千穂をみつめるのである。八千穂は苦笑いをした。

「戦に役立つような霊力なんて、ぼくはあまり好きではないよ」

「そうは言ってもね、われらはそれに頼るしかないのだよ」

 明日香はしずかに言った。八千穂はふと疑問が首をもたげ、しかしそれを口に出すようなことはできなかった。

(どうして戦をしなければならないんだろう)

 ここまできて、納得しがたい疑問であった。どうにかして戦を回避するてだてはないのだろうか。しかし皆の前でそれを口にしてしまえば、何かが揺らいでしまいそうな気がした。・・・八千穂は高天原をすてたのだ。はっきりと、高天原の敵になったのだ。いわれもなくしいたげられる国つ者を助け、高天原を彼らと共に打ち砕くのだ。いまさら躊躇うなんて、あってはならないことに違いあるまい。

(それを選んだのは、ぼく自身だ)

「軍をおこすには、武器がいる」

 うつむく八千穂をよそに、明日香は話をつづけた。

「高天原は、湊に集まる船のことごとくに、合札を持つことを義務づけておるそうな。行き先と積み荷の知れぬあやしい船には、けっして合札をやらぬようにと、命令をだしているとね」

「それだがね、湊の監督はまったく好き勝手にやっているようだぜ。おれと卯月も栗田から船に乗ったが、高天原から印判を渡された監督が、袖の下なしには合札をださないときている。貧乏人は船にも乗れないし、荷のほうも湊で腐っているありさまだ。とにかく、めちゃくちゃさ」

 ふうむ、と明日香はうなった。よりかかった脇息をきしませる。

「荒潟の湊はどうか?」

「荒潟の湊もかわりないようです。監督が肥え太り、荷ばかりが湊でとどこおっておるという有り様。とは言え、見張りがなまけておったおかげで、わしらは荒潟の湊にも、何の見咎めもなしに着けたし、こうして無事に武佐師にも帰れた」

 卯月が言うと、明日香はほほえみながら、きっぱりと言い切った。

「では、一月後、手初めに荒潟をおとそう」

「荒潟・・・海路の確保ですな」

 互大が口を挟むと、明日香はうなずいた。

「荒潟は武佐師にもほどちかい。ここから高天原へ軍を進めるとしても、武器がもっといるし、馬もほしい。だが、まずは武器だ。出手母は白野の庄の若者たちは、その多くが舟を操れると言うし、出手母から荒潟まで潮にのれば、七日ほどで着くというはなしだもの」

 伊住はようやくくちびるを緩めた。

「よし、まずは荒潟だ。あそこを仕切っている監督を追い出せば、湊にとどこおっていた荷も動き出す」

「船をだせないままでいた人たちも、喜ぶだろうね」

 八千穂がぽつりと言い落とした。卯月は笑った。

「そうだ。高天原のやつばらは、国つ者どうしの連絡を取らせまいとしたのだろうが、陸路ばかりか海路にまで、なまはんかな規制を敷いたせいで、すこぶる船びとたちの不満を買っていたぞ」

「どうやら苦もなく落とせそうだね」

 明日香はじつに鷹揚にかまえ、口元にはふくよかなほほ笑みをしながら、こう締めくくった。

「われらの目の前にともされたあかりは、まだ消えてはいない。それが分かったならば、一日きりとは言え、祭りをめいっぱい楽しむがいい」      *         *       *

 一月後の荒潟攻略をまえに、小鹿野では一日きりの祭りが催された。本来なら十日も続けて行われる大きな祭りだから、ずいぶんと盛り上がりに欠けるかと思いきや、例年におとらぬ賑やかさがあった。

 馬を操りながら、吊るされた的に向けて弓を射る競射や、足をしっかり地面につけて、的に射当てる数を競う射的においては、武佐師の男なら的の中心に射当てて当然とみなされるきらいさえある。

 いつものような出店やら市やらはなかったが、鍛え上げた男たちが、おのおの力自慢をする舞台は、十分な華やかさでもって人々を楽しませた。

 この日をおいて、自分の実力を周りに知らしめるのに絶好の時はない。こちらに寄せられるたくさんの視線のなかに、ひとつきり、目当てのひとのまなざしをみつけてから、うす浅葱の羽織に同色の鉢巻をひたいに絞った居淵は、息をひとつつき、それからぎりぎりと弓を引いた。

 いい頃合いにふあっと矢羽をはなすと、鋭くまっすぐに飛んでいった矢先が、的の中心のちいさな黒丸に狙いすましたように、深々と突き刺さった。三方をずらりととりかこむ桟敷から、やかましいまでの歓声が湧き上がる。こちらが二十、臙脂色の羽織のあちらの組は十七を射当てたところだ。

「さあ、こっちも当てていこうか」

 臙脂の羽織と鉢巻もいたく似合った、伊住という丈高い若者が進み出て、居淵の組のとなりの的に弓をかまえた。伊住は多数の視線にも物おじすることなく、それどころか楽しくてならないというように、ぎりりと弓をひいた。放たれた矢はやはり的の中心を射貫き、ふたたび桟敷から歓声ともため息ともつかない声が漏れた。

「二十、十八。浅葱の組は鯵根彦、臙脂の組は卯月」

 得点をいいあげる、うわずった声が桟敷の歓声をしずめた。ふたたび人々のまなざしは射手にそそがれる。鯵根彦はおしくも中心をはずれ、卯月は女ながらも引けをとらずに点数をかせいだ。試合は午後にもちこされ、観客にも休憩が知らされた。

 居淵は桜の木の下、取り出した手布で額ににじんだ汗を拭っていたが、近づいてくる足音に気づいて後ろを振り返った。

「あんた、けっこう腕が立つんだね」

 みると、臙脂色の羽織を着込んだ伊住が立っていた。

「武佐師の男ってのは、みんなそうなのかい?」

 人懐こくはあるものの、どこか油断ならないものを伊住という男に感じていた居淵ではあったが、射的をしているうちにそんな思いは吹き飛んでしまった。伊住の自信は、口ばかりではなく裏づけるものがあるゆえだという、新しい発見があった。

「武佐師の男は三つになったら、母さんの乳よりも馬の背にくくられるんだ。手には玩具がわりに弓矢が握らされる」

「道理で、どいつもこいつも腕が立つ」

 ふたりは笑い合った。伊住はややしてから、何げなく言い出した。

「ここへ来て十日になるが、こんな住みやすい土地は初めてだね。高天原もいいが、あそこはどこかを飾っている。おれも裸のままではいられない気がしていた」

「おまえのようなお人が裸でいたらば、女がほって置くまい」

 伊住はそれを聞くと、気持ち良く笑った。

「卯月の言っていた以上に、ここはいい土地だ。そのうえ、人間もいい。あんたも、思っていたより話がわかる男だとみた」

「おだてても何もでないが」

 にこやかに言った居淵だったが、伊住がふいにまじめな表情をしたので黙った。

「話が分かりそうなあんただから言うんだぜ、真由のことは、あきらめな。悪いことは言わないから」

 居淵は苦笑いをした。

「何を言うのだ。そんなことを言っても、わたしは揺らがぬぞ」

「あんた、本気なのかい」

 伊住は顔をしかめて続けた。

「こんなお遊びをしてはいるが、真由はあんたのものにはならない。あいつには、まだすることがある」

「また、その話か。親父もおまえも、高天原の巫が、一体なんだという」 居淵は伊住をにらんだ。

「あの子がどんな得たいの知れないちからを持っていようと、わたしはかまわない。それに、あの子にはするべきことがあるとおまえは言うが、あの子にはちいと荷が重すぎはしないか」

 伊住は驚いたように居淵を凝視した。居淵は顔をそむけた。

「あの子はわたしに扉を開ける。かならずだ。わたしはあのような男に負ける我が身だとは思っていない」

 居淵は心底そう思っていた。八千穂が弓を引くのを見ていたが、まるで形がなっていない。一度などは的ではなく空に向けて矢を放ち、会場の失笑を買っていた。もっとも、そんなことはちっとも気に止めないで、堂々としていたのは見上げたものだが。

 とはいうものの居淵は、八千穂の中身を途方もない大器か、あほうのどちらかであると踏んでいる。もちろん後者である。

「そうかね。選ぶのは真由だよ、覚えておきな」

 居淵は見込みがないと言い切られているようで、腹が立った。

「なぜそこまで肩を持つのだ。あの、巫だか何だか知らないが、男とも思えぬみそっかすを」

 伊住はまじめに考えているようだったが、ややして笑った。

「あいつは、おかしな奴なんだよ。おれもはじめは、弱腰ばかりの目につく、いけ好かないやろうだと思っていた。ところが存外、したたかなところもあるんだぜ。いいかい、岩よか頑固なんだ」

 居淵はかるく首を横に振った。

「おまえというお人も、さっぱりわからん。親父も、わざとわたしに負けろなどと手を合わせるありさまだ。わたしはけして負けるつもりはない。卯月とならんで、どちらが男か女かわからんような奴には」

 居淵の父は武佐師の首長、互大である。互大は萩と呼ばれていた身元知れずの娘が、真由であると気づくなり、居淵に彼女をあきらめるよう言いさとした。しかしそれで引き下がる居淵ではなかった。あきらめるには、彼女の笑顔やしぐさに、心が引き寄せられすぎていた。

 息子のはじめて惚れた娘である。互大もむやみにあきらめろとは言い難く、ちょうどいい、祭りのうえの勝負の席で決着をつければどうかと提案したのである。勝ち負けを見届けるのは、桟敷に座った何百という見物人。見物人のほうも、聞き捨てならない他人の恋の行方がかかっているとあっては、応援の野次にも力がこもった。

 射的で相手よりさきに四点離したほうが勝ちである。勝ったら、今晩真由を妻問いできる権利を先にいただいたことになる。扉を開けるのは真由の意志だが、二日目まで扉がしまっていることもありえまいと、皆が考えた。

 居淵は武佐師でも一人前の男である。この場合一人前というのは、弓においても乗馬においても、ひととおりこなせるという意味だ。それに彼は人当たりもよく、やわらかな物言いの仕方と笑顔は女をなごませる。彼は小鹿野でも一、二を争う未婚のいい男であった。

 それに対して、弓もろくにひけないような八千穂が相手では、相手と呼ぶことすらもはばかられるだろう。伊住や卯月の手助けで点数をつめてはいたが、的に近づきもしない八千穂の射方は、歓声ではなく失笑ばかりを買うのである。ただ八千穂の底知れないところは、失笑や嘲笑といったものを、まったく気にしていないところであった。

 口汚い野次をぶつけられてもけろりとしている様子は、やはり、どこか頭の中の大事な柱が抜けているとしか思えない。

(あれは、やはりあほうなのだ)

 居淵は決めつけることで、こころを落ち着けさせようとした。

 休憩も終わりを知らせるために、打ち鳴らされた太鼓の音が、染み入るような青空に広がってゆく。八千穂はなかばうんざりとした気持ちで矢を手に取ったが、あまりに気が乗らなかったせいか、右手からぽろりと弓を取り落とした。卯月がみかねて拾い上げたが、伊住がおもわず声を上げた。

「まったく、あんたの態度は目を覆うものがあるぜ。なんてやる気がないんだ」

 八千穂は卯月から弓をうけとると、張られたつるを何げなくはじいていた。

「・・・やる気もなくなるよ。ぼくは、じぶんに愛想がつきている。弓さえも満足に引けないじぶんを、今日ほど情けなく思ったことはない」

 伊住と卯月は顔をみあわせた。

「うまくやろうとすればするほど、どうにもならない」

 心底悔しそうに言うものだから、伊住は苦笑をした。

「いいから、あんたは楽にかまえていなよ。おれと卯月が、なんとかしのいでやるから」

 すると八千穂は首をふった。

「それではだめだ」

 それからふいに顔を上げると、やけにさっぱりとした笑顔をするのである。弓を構えだしていた居淵に近づき、これをよびとめると、八千穂はゆっくりと、けれど大きな声で言った。

「ぼくの負けだ」

 居淵はぎょっとして八千穂をみかえした。ここでいう負けとは、真由をあきらめたと言ったも同じである。

「居淵、あなたの勝ちです。ぼくは伊住や卯月に助けてもらっているけれど、そうして勝っても、本当の勝ちではない。ずるだ。ずるをして、苦労もなしにただ座っていることは、ぼくにはできない」

 八千穂は言い切った。

「だから、ぼくの負けだ」

「あほうか」

 居淵は目を瞠り、思わずのようにつぶやいていた。

「八千穂らしいというか、のう、伊住よ」

 おもしろい見物が、八千穂の一言でお開きになってしまったのである。いっせいにしんとした桟敷のなか、卯月はこらえ切れずに声を上げて笑った。伊住も、ぽかんとしている居淵の表情がおかしくてならなかった。「おれたちが一生懸命にやっていたのを、一言でふいにしちまって」

 伊住は大声を上げて笑った。

「まあ、いいさ。今夜はおもしろい見物がみられるぜ、こんな射的よか、ずっとおもしろいのがね」

 いちばんの見所が八千穂の試合放棄でお流れになってしまったせいもあり、観客たちの不満はものすごいものがあった。なにしろ妻問いをかけた二人の男の射的勝負である。相撲の試合ものど自慢も、これの前にはたちまちのうちに色あせるほどの催しだというのに、ぷっつり打ち切りになってしまったのである。人々の胸がすっきりしないのは当然であった。

 しかも、妻問いをかけて弓を引いていたのは、武佐師の首長の評判の息子、居淵である。もうひとりの八千穂には、両神山の明日香姫の後ろ盾がついている。見目もよく若くもある二人の男が欲しがるのは、赤い目の男鹿に導かれて居淵が発見したといううわさの娘であった。いやがうえにも結果が気になるところ。

 あふれかえる不満で祭りどころではなくなっている会場に出て行くと、武佐師の首長互大は、めいっぱい声を上げた。人々はしずまり、居淵も八千穂も互大に注目をした。

「人には得手、不得手というものがある。八千穂どのにおいては、たまたま弓が不得手であったのだ。人々の不満もあるし、次こそは歌謡で勝負をつけよう」

(親父め、苦し紛れにもほどがある)

 居淵は胸のうちで苦く吐き捨てた。互大は、八千穂のうしろにある明日香姫の後ろ盾をおそれているのだ。たしかに武佐師では、何をおいてもまず明日香姫の言われように従うのがしきたりになっている。明日香姫の容姿はごく幼いけれど、途方もない長い時間を、不死の身で生きている方なのである。居淵も敬わないはずがない。

 だが、これだけはゆずれなかった。

「国びとに愛されるような、長く歌い継がれるような歌謡をつくりあげ、真由どのの心を動かしたほうを勝ちとする。審査はもちろん、真由どのにお願いする。もはや一日目も二日目も、どうでもよい。戸のまえで歌い、真由どのが開けたらば、勝ちだ。それしか勝ちはない。負けもまたない。よいな」

 互大は、今夜の妻問いにかける息子の意気込みを知ってからは、どうにも複雑な気持ちであるらしい。明日香姫のことを考えれば、彼女の待ち人である八千穂を、ぞんざいには扱いかねたし、息子に諦めろというのもあわれだった。そもそもあの頑固者は、やすやすと諦めようとはしまい。

 若いときの自分によく似ているだけに、互大は息子の頑固さに頭を痛めていた。いいや、胃を痛めていた。

「どうにも皆が静まらぬようだから、このわたしが今夜の賭けをおおやけに許そう。ええい、楽しむがいい。この場は、これにて解散!」

 言い出す声もなにやらすてばちぎみで、互大はぶりかえした胃痛に顔をしかめた。明日香姫の提案とはいえ、ひっそりと、恥じらいもふくめて行われるべき妻問いを、賭けがらみで考えることは、頭の固い互大にとってはやはり胃痛の原因なのであった。

       *        *       *

 夕日が西の山なりに隠れ、その名残がうろこ雲を赤や緑にあざやかに染めるころになると、きゅうに肌寒さをおぼえて卯月は身を縮めた。卯月は着物のあわせをかき寄せて首を縮めてから、ついさっき火がついたばかりの庭の篝火を、伊住の肩越しにみつめた。

「何がふしぎだって」

 伊住は客人用の熊皮のしとねのうえに、ながながと身を横たえながらたずねた。武佐師の首長の御館だけに、客人用の室にはことかかない。海路で荒潟へ着き、それから陸路で武佐師にたどりついた二人も、この十日のあいだ首長の御館でやっかいになっていた。もともと一人きりというのが好きではない伊住は、酒を手にして卯月の室を訪ねるのが日課のようなものになっていた。

 見かけによらず大酒飲みの卯月は、伊住の訪れを素直に喜んでいたが、伊住のふところのどこからそんなに酒が出てくるのか、ひどく不思議がってもいた。

「つまらないことを気にしていないで、飲もうよ」

 伊住はあかるく言ったものだったが、あとになって、御館の竈をあずかる女の頭のゆうから調達していたものだと知り、卯月はなにやら愉快ではなかった。

「わしが言うのはそのことではない」

「だから、なにがおかしいって」

 伊住はのんびりとたずねた。

「八千穂のことだ。気前よく居淵に先を譲ったうえで、あの自信。なにか策があるのだろうか」

 卯月が言うと、伊住は喉をならして低く笑った。

「策を弄せると思うかい、あいつが。策というものが一番似合わないのがあいつだろう」

「わからん。おまえさまは真由が居淵と夫婦になればよいと思っておるのか。伊住よ、おまえさまは一体どちらの味方なのだ? 昼間は八千穂を助けていながら、賭けでは居淵をひいきにしている」

 伊住は横になったそばから卯月を眺めた。

「味方だのなんだの、あんた、そいつはまるっきり女の言いようだぜ」「わしは女だもの」

 卯月はむっとした表情になった。伊住は笑った。

「冗談だよ。なあ、怒るなよ、美人がだいなしだろうに。・・・おれは別に、真由がどちらを選ぼうがかまわないよ。とはいえ、真由はとうに決めているだろうが」

 卯月は首をひねっていた。

「どんなやつが脇からちゃちゃを入れようが、どうにも揺らがないものってのがあるんだよ。どんなに男のほうが本気になろうと、女が腕を開いてくれなきゃ、いきり立ったって、まるでむだになっちまう。・・・きっと、八千穂のやつはうまくやるよ」

 伊住がやけに静かに言い出すので、卯月は何げなく訊いた。

「なにやら、おまえさまの言葉はやけにしんみりとしてはいまいか」

「しんみり、だって。おれが?」

 食えない笑顔でほほ笑む男をながめながら、卯月は言った。

「・・・八千穂に分があると知っていて、おまえさまが居淵に賭けたわけがわからん」

「木の実の御統ぐらいなら、いいだろ。損得なしだ」

「だが、あれは特別な品ではないのか。あの、芽の出た木の実の御統。おまえさまがやけに大事にしておったもの、わしもただの御統だとは思い難かった」

 伊住はそれを聞きながら熊皮のしとねから身を起こすと、頭をかいた。「たしかに大事なものさ。でもね、あれに縛られちゃならないんだ。真由のやつも、気高でおれにあの御統を渡したことを、すっかり忘れていただろう。だが、それでいいんだ。思い出は大事だが、古びたものよりも、もっと大事なものがあるからね」

 木の実の御統とは、櫛名田の持ち物のことである。伊住が過去から持ち帰ったものだったが、真由にはとうに必要ないものなのかもしれなかった。むしろ、そちらのほうがいいのだと伊住は考えた。

 賭けの品として御統を放りだしたのは、もうこの手に戻ってこなくともかまわないと思ったせいだった。わかりきっている賭けの結果など、どうでもいいのである。

「思い出よりも大事なものとは、なに?」

 卯月が聞いた。しどけなく足をくずし、酒にほんのりと目元を染めている彼女を前にして、伊住は苦笑いをした。この期に及んで、まだ卯月を胸に引き寄せようか、止めようかを迷っているじぶんがいた。

「未来さ」

 伊住は土器をあおってみてから、ふいに渋い顔をした。酒を注ぐのをわすれて、からの土器をあおっていたのである。

「おまえさまらしくない」

 卯月はほほえんだ。素知らぬふりをしていながら、動転しているのを隠し切れないでいる伊住がおかしくてならないように。

「酔っておるのか、そうではあるまい?」

 気の強いほほ笑みの下には、誰よりも匂いやかな、たおやかなものを持ち合わせているおんなである。卯月は口元にほほ笑みをたたえたまま、手を伸ばして伊住の着物の胸元をつよく引き寄せた。

「おまえさまの語る未来を、もっと聞きたい。わしに教えてくれまいか」 伊住には、断る理由などどこにもなかった。

 日が落ちてきても、祭りの騒ぎはすこしも下火にはならなかった。夜の闇を打ち破らんばかりに勢いよく燃え始めたのは、里じゃうのあちこちにある篝火である。夜の催しとして大掛かりな歌垣が行われることになっており、男も女も皆、浮足立っていた。

 今夜ばかりは夫婦もただの男と女にかえり、ふだんは目配せばかりで満足し、こらえていた気持ちを、相手にうちあける。高々と燃やされた炎の櫓を囲んで、歌と踊りに興じ、そのあとは夜の闇に男女が連れ立って消えて行こうと、咎める者はだれもいない。夜は短いのである。

 篝火は静かに燃えていた。外の騒ぎとは打って変わって、首長の御館のなかはしんと静まり返っている。居淵は前に踏み出す足にもわずかのためらいもなく、廊下からひろい前庭におりた。

 真由は五、六人が寝泊まりしている女部屋から、離れにある厩舎に程近いちいさな小屋に移された。もとは馬番の仮寝小屋であるだけに狭苦しいが、すみずみまで手入れしてあるので、あまり汚れも気にならないはずだ。それに居淵は、彼女がいるならば結婚する場所など、どこであってもかまわなかった。

 ちっぽけな小屋の前に立つと、おかしなくらい足が震えた。寒くもないのにかじかむ右の手を軽くこぶしに握ると、居淵は立て付けの悪い小屋の戸をたたいた。するとすぐさま真由のかぼそい声が返ってきた。

 居淵は一度ふかく息をつき、片手で戸に触れながら、低く歌った。

「うつくし玉の、萩のいらつめ」

 うつくし玉の 萩のいらつめ

 吾れ恋いうるならば 背をかいなづれ

 まなこに細く 笑まれしいざなみ

 胸乳かいよせ 言霊のありよう 肌地であかせば

 あらたまの恋の 巌のごとき恋の障りも

 にぎたまの恋の 清水のごとき尽きぬおもいも

 しずまるやあらむ しずまるやあらむ

 心底からのまごころを込めて歌ったつもりだった。けれど真由は戸に近づく気配すらみせず、いい加減に居淵を苛立たせた。

 明け方になっても居淵は小屋の前に突っ立ったままであった。恨めしく言い立てようと、なだめすかそうと、真由は居淵を招き入れようとはしなかった。やがて早鳴き鳥ともよばれる鶏が、遠くで鳴くときになると、居淵は恨めしく戸を眺めるばかりの、穏やかな気持ちではいられなくなっていた。

 板戸をゆすぶり、ひっぱり、けれど戸は頑固にも開かなかった。

「いまいましい板戸だ。気持ち良く開けばいいものを」

 これ以上、外に立ち尽くしているのは恥でしかなかった。居淵はしかし立ち去りかねて、苛立ちを押さえ切れないまま、そうつぶやいた。すると、中から真由の声がした。板戸のすぐ向こうである。居淵はようやく彼女がこころを決めたのかと考えたが、そうではなかった。

「居淵」

 真由は頼りない声で、しずかに言った。

「怒らないで聞いて」

「わたしが何を怒るというのだ・・・」

 居淵はいやな予感をもてあましながら、たずねた。

「わたし、あなたに助けてもらったわ。あなた、とても優しくしてくれた。やさしい言葉をたくさんくれた。・・・わたし、あなたの心映えがとても嬉しかった」

 真由はつづけた。

「あなたはわたしの欲しい言葉をぜんぶくれたわ。・・・くちづけも」

 居淵はがまんならなくなって、板戸に再び手をかけた。すると真由が制止の声を上げる。

「どうして。おまえは何をためらうのだい」

 居淵は根気強くたずねた。真由はかならず戸を開けるはずだという自負と、見込みはないだろうとの諦めが、彼の胸内でせめぎあっていた。「わたしの心映えを疑うのか」

「ちがうわ」真由はくるしそうに言った。「ちがうの、ごめんなさい」 居淵はあきらかな拒絶の言葉を聞きとめ、にわかにめまいを覚えた。目がくらむほどの怒りが湧き起こり、居淵は語気も荒く言い立てた。

「ごめんなさいではわからない。なぜわたしではだめなのだ」

 真由は黙っていたが、ややして言い出した。

「・・・あなたは、あのひとではないもの」

 居淵は、怒りすらもしぼんでゆくのを感じていた。これでは、はじめから勝目などなかったと言われているのと同じだ。

「わたしではだめなのか。おまえの背負っているものを、わたしも共に背負うことはできないのか」

 真由は答えなかった。うす闇に日が差しはじめた。鶏が鳴き、けれど戸は開かない。居淵は頭を何度もふった。何かを振り切るようにきびすを返すと、彼はもう二度と小屋を振り返ることはなかった。

      *       *       *

 ひとりきりの仮寝小屋の寒さは、ひとしおであった。真由はおそろしいばけものを待ち受けるような気分を抱き締めたまま、小屋におしこまれ、きちんとあつらえられている寝床ではなく、隅の方にちいさくなって、ひざを抱えていた。卯月が連れてきてくれたテンの子が胸元にいなければ、心もとなさで眠れもしなかっただろう。

 今夜の彼女には、寝床こそが何よりもおそろしいものに思われたのである。明け方になり、居淵が怒り出すときになると、真由はどうしていいのかわからなくなっていた。戸を開けて居淵を招き入れれば、居淵はこのうえなく優しい真由の夫になるのだろう。真由は彼の子供を産んで、育てるのだろう。そして、二人してゆっくり老いてゆくのだ。

 高天原からはなれたこの武佐師という土地で、高天原の脅威も、身の内に息づく霊力も忘れ去って。

 おまえの背負った荷など、捨ててしまえばいい。苦しいことはすべて忘れてしまえばいい。そうささやく彼の声と目には、真由への慈しみだけがあった。しぐさはぶっきらぼうだが、なんの偽りもかけひきもない。居淵はいいひとだ。真由が心を決めて戸を開けさえすれば、すべてうまくいったのだ。

 何度、戸を開けようとしたかわからない。立て付けが悪くて開きにくくなっている板戸だけれど、真由が彼を招こうとする気があったなら、たちまちのうちに居淵は戸を破ってでも真由を訪ねただろう。そういうひとなのだ。居淵はあくまで真由に戸を開けさせたかったのだ。・・・そして、真由は開けなかった。

(やっぱり、わたし)

 真由は、あきらめとうらめしい気持ちをふたつ抱えて、考えた。

 真由が心底から呼ぶのは、居淵ではない。ほかの誰でもない。どんなに冷静に考えようと、どうあっても冷静になれない部分、ゆずれない部分というのを真由はみつけていた。半分のあきらめと共に認めていた。 その時、戸をたたく音がはっきりと真由の耳を打ち、彼女の目を覚まさせた。寝床の毛衾を体に巻き付けるようにして、小屋の隅でうとうとしていた真由は、ぎくりとして目を開けたのだった。

 居淵だろうかと考え、すぐに思い直した。真由は彼をこっぴどく振ったのである。真由に、もう少し心の余裕があれば、もっとましな言いようもあっただろうが、居淵がなまじ魅力的なぶん、真由は彼をきつく突っぱねなければならなかった。

「ぼくだよ」

 いままで眠っていた心臓が、にわかに高鳴りはじめた。思わず泣きだしたくなりそうな安堵とともに真由は立ち上がり、しかし戸を開けようとした手を下におろした。真由は心を落ち着けさせると、できるだけおだやかにしゃべった。

「何をしにきたのよ」

「きみを妻問いしに」

 真由はぎょっとした。男と女が夜の寝床でなにをするかも知らないようなひとが、当然のように妻問いなんて言い出したことに、真由はおどろいたのだった。

「妻問いの意味も知らないくせに」

「それくらい知っているよ」八千穂は無知を決めつけられて気を悪くしたのか、憮然とした声で言った。戸をいちまい隔てているだけなのに、なんとなく二人の間の距離が遠くかんじられるのを、真由は奇妙に思わずにはいなかった。

「妻問いというのは、だいたい夜だと決まっているでしょう」

 何となくはねつけるように言うと、悪びれない声が返ってきた。

「夜じゃないと、きみには会えないの?」

「なによ、やっぱり、なんにもわかっていないじゃないの」

 真由は思わずむっとして声をあげた。

「わたしが戸を開けるということは、あなたに身をあずけるということなのよ。なのに、あなた、なんにもわかっていないじゃない・・・」

 真由はやるせなくなって、小声で言い立てた。

「ここを開けるのは、簡単なことではないのよ。わたしにだって、ちゃんとした覚悟というものがいるんですからね。・・・わたし、高天原に刃向かう恐ろしさも知ったし、心底から高天原を憎んでもいるわ。失わないでいることの難しさも、知ったつもりよ」

 真由はあえいだ。

「・・・高天原は、わたしから大事なものをたくさん奪ってしまった」

 八千穂はものも言わずに、真由の話を聞いていた。

「高天原が憎いわ。でも、それと同じくらい、おそろしいの。・・・あなたといることは、もういちど高天原に真向かうことよ」

「ぼくは、もうおそれない。逃げたりもしない」

 八千穂はまじめに言った。

「今度こそは逃げない。禍つ誓約からも、きみへの気持ちからも、背を向けて逃げたりはしない。・・・きみから離れてみてはじめて、どんなにきみが大事かわかった」

 一呼吸をおいてから、八千穂はしっかりと言った。

「きみは、ぼくの好きなひとだ」

「ほんとうに?」

 真由は信じられないことばを聞いたというように、瞳を瞠った。

「ほんとうだよ」

 それから八千穂は落ちつかなげに言った。

「でも、こうして戸に向けてしゃべっていると、なんだか奇妙だね。まるで板戸にほれているみたいだ」

 すこしの沈黙があった。真由は息をつめて、それから笑い出した。

「わたしがこのまま、うんと言ったら、あなた、板戸と共寝をするのかしら」

 八千穂は真由が笑うのを聞きながら、冗談とも本気ともつかない調子でつぶやいた。

「板戸は板戸だよ。きみのように笑いもしないし、怒りもしない。なにより、共寝するなら、骨を抱いているみたいで落ち着かないだろう」

 真由は戸をそっと押し開いた。歪んで立て付けの悪かったはずの板戸は、きしみもせずにすんなりと開いた。真由が心を開いたときにおのずと、板戸に真由がほどこしていた力も消え去ってしまったようだ。

「あなた、ほんとうに八千穂?」

 朝日を背にしているものだから、真由は目を細めなければならなかった。山の間から赤く染まった雲をひきいて、そろそろと昇ってくる太陽の光の加減のせいだろうか、真由には八千穂が前よりもずっとたくましく見えたのだった。

 やがて真由は、彼のまなざしがとても力強いことに気づいた。やさしくも強かなまなざしは、真由をみつめてほほ笑んでいる。今の彼には頼りなげなところなど、ちっともみつけられなかった。

 いままで真由の衣の胸元にもぐりこんでいたヤチホコが、ひょっこりと顔をだし、ひとあし先に八千穂にとびついた。八千穂は目を丸くしてから、声をあげて笑った。

「ぼくは八千穂だよ。でも、前とはすこしちがうところがある」

 八千穂は真由を見下ろしながら、笑い声をおさめてほほ笑んだ。

「ぼくはね、信じることにしたんだ」

 八千穂は強い口調でつづけるのだ。

「ぼくの霊力は、きみにあだなすものではないって。・・・ぼくは、きみと生きることをやりなおしたい。きみは、いやだろうか?」

 真由は喉がつまって、何も言うことができなかった。くちびるを開きかけたものの、言い出したいことが多すぎて、真由は口をつぐむしかなかった。こんなときにかぎって言葉というものは、まるで役に立たない。 真由は爪先だちをして、八千穂のうなじに両手をかけた。

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